少し前の話ですが、とある小売業の店舗での話です。

そのお店では、多くのアルバイト社員が働いており、時給計算でお給料が支払われています。店長にお話を伺っていたら、「15分単位での給与計算だったのですが、1分単位での給与計算に変えたんです」とのこと。

「1分単位での給与計算は非常に面倒なのに、なぜだろう?」と疑問を感じた私は、すぐに「どうしてですか?」と質問しました。すると、「経費削減のためです。」との返答がありました。

 

この変更、あなたはどう思いますか?

 

実際に経費は削減できたのか?結果も含めて、解説していきたいと思います。

 

人件費のムダをカットして経費削減…?

1分単位での給与計算ということは、例えば10時から17時のアルバイトの場合、10時キッカリに出勤のタイムカードを打刻し、17時キッカリに退勤の打刻をする。休憩が60分ある場合は、実働6時間分のお給料が支払われることになります。

ただ、1分でも定時を過ぎれば給与に影響してしまうわけですので、シフトが「10時~17時」であれば、1分たりとも早出残業NGということになります。

 

15分単位で給与計算していたときは、始業の9時50分にタイムカードを打刻しても、お給料は10時から発生となります。17時5分にタイムカードを打刻しても、17時までのお給料となります。

つまり、就業の前後計15分のサービス就業があったわけです。これが良いとか悪いとか、法的にどうのこうの…という問題はここでは置いておきます。

 

私が見る限り、アルバイト社員は非常に真面目に働いている人たちばかりでした。経費削減や人手不足も相まり、なかなか就業時間内に手が回らないため、アルバイト社員は好意で、ゴミ替えやフェイスアップ、前出しをしてくれていました。

しかし、給与計算が1分単位になったことで、タイムカードを定時にきっちり打刻しなければならず、時間を過ぎたらフロアにいられなくなってしまいました。融通の利かない、時間単位のロボットのような働き方になってしまったのです。

 

あるアルバイト社員にこっそり話を訊いてみました。

「本当はいろいろやりたいこともあるんだけど、1分単位で区切られちゃったから、『もう少しだからきりの良いところまで仕事してから帰ろう』みたいなことができなくなっちゃったんです。

タイムカードを決められた時刻に打刻して、再びフロアに戻るという方法もなくはないんですけど、私がそれをやっちゃうと後輩のアルバイト社員にも無言で強要しちゃうことになっちゃうからね。」

 

アルバイト社員には時間内にきっちり働いてもらい、サービス就業をしていただくわけにはいかない。これには私も同じ意見です。

 

しかし、一歩やり方を誤れば、会社にとっても従業員にとっても大きな損失となります。

 

 

1分単位で人件費を徹底的にカットした結果

残念ながらこの店舗では、この施策を講じた結果、衛生面・安全面での評価が下がりました。結果、対外的な評価も下がりました。

 

アルバイト社員も、「お店は無駄なお金を払いたくないんだろうな」とモチベーションが下がったようです。

もちろん、時間内はきっちり仕事はするものの、そもそもの人手不足のため限界があります。結果、「できなかったことは仕方がない」として、それ以上のことには一切手を付けなくなりました。衛生面や安全面にまで手を回せなくなってしまったのです。

せっかく人件費の削減が成功したにもかかわらず、衛生面や安全面が行き届かずに、かえって費用がかかってしまったそうです。その上、売上も減少してしまったとのこと。

 

私はもともとオーナーと顔見知りだったため、「乱れてきた店舗やバックヤードを何とかせねば」ということで、この段階で職場の環境改善コンサルティングのご依頼を受けました。

 

結局、必要なのは職場環境の改善だった

ヒアリングの結果、多くの問題点が出てきました。もちろんオーナーも店長も、ある程度予想はしていたそうですが、どこからどう対処すれば良いのかが分からず、日々のルーティンをこなしていた、とのこと。

今回は、衛生面・安全面という切り口からTO DOを洗い出し、着手。

ここに仕組みができてくると、おのずと整理整頓が視野に入ってきます。

 

このケースでは店舗とバックヤードが対象でしたが、職場環境は基本的にはどこも同じです。

問題点はさまざまですが、職場環境の改善、整理整頓でほとんどの問題が解決します

 

現場のことは、現場で長い時間働いてくれているアルバイト社員の方が知り尽くしています。そこを重々承知しているオーナーと店長は、ボトムアップできる環境を作り出してくださいました。

すると、オーナーや店長が気づけないような大量の問題点が出てきました。特に、新人アルバイト社員には、まだ社外の人間としての第三者目線も備わっていますので、オーナーも店長もノックアウト状態。

 

そして、「どうせルールや仕組みが存在していないのなら、自分たちで作ってみたい」という意見がアルバイト社員から出てきたのです。

 

本来ルールや仕組みは、会社として従業員に提供すべきものなのかもしれませんが、アルバイト社員は就業時間の合間を縫って、自分たちで考えながらルールや仕組みを作っていきました。

 

ルールや仕組みを一つ一つ社員が作り上げた結果

 

自分たちで考える工程で、安全衛生面もクリアし、効率的に働く環境が作り上げられました。

そして見事に、アルバイト社員が働きやすく、お客さまにも良いサービスを提供できる環境が整ったのです。

環境が整ったことで、アルバイト社員にも余裕ができたのでしょうか、笑顔での接客が増えたように感じました。

 

私はプロとして効果的な助言を少しだけ発言した程度。ほとんどは、人柄の良いオーナーや店長のもとに集まってきた素敵な社員たちが達成してくれた成果です。

 

アルバイト社員の一言。

「あとはこれを維持継続、状況に応じて変化向上させていくだけですね。」

おいおい、それは私のセリフだよ!と思ったのが今でも印象深く残っています。

 

そうそう。

職場環境が改善したことによって、結果的に経費削減につながったことは言うまでもありません。

 

※人件費を削減しても全体的な効果が見られないとお困りの方は、こちらをご覧ください。

職場の環境改善コンサルティング